2026年9月6日付のドイツの有力メディア「DIE ZEIT」にて、株式会社Amadeus Codeおよび当社が提供する音楽アプリ「音会 / OTOKAI」が紹介されました。
DIE ZEITは、1946年に創刊されたドイツを代表する全国的な週刊新聞の一つです。政治・経済・社会・文化・科学など幅広い分野を扱い、綿密な取材と分析に基づく記事で知られるドイツの主要なクオリティメディアです。
今回の記事では、高齢化が進む日本における認知症の社会的・経済的課題を取り上げ、認知症サポーターの育成や認知症カフェ、データを活用した介護・予防の取り組み、民間企業による新たなサービスなどを紹介しています。
その取り組みの一つとして、Amadeus Codeと「音会 / OTOKAI」についても取材いただきました。
記事では、当社代表取締役CEO・井上 純へのインタビューとともに、写真や動画から感じたことを言葉にし、音楽と組み合わせて作品をつくる「音会 / OTOKAI」の仕組みを紹介。また、音楽を用いた創作活動と認知機能との関係について当社らが実施した研究や、その成果を発表した学術誌『Brain and Behavior』の論文についても触れられています。
日本が世界に先駆けて直面している高齢化と認知症という課題をテーマに、ドイツの主要メディアを通じて「音会 / OTOKAI」の取り組みを紹介いただく機会となりました。
▼掲載記事はこちら(DIE ZEIT/ドイツ語)
https://www.zeit.de/wirtschaft/2026-09/demenz-japan-alternde-gesellschaft
ここでは、生徒たちがすでに認知症との向き合い方を学んでいる
認知症患者の増加によって、高齢化社会では社会保障制度が限界に近づき、経済にも負担が及んでいる。ドイツは日本から何を学べるのか。
フェリックス・リル
2026年9月6日 18:50
ナオミ・サエキが黒板にいくつかの重要な数字を書き終えると、この日の午後、教師は色鮮やかなパンフレットを掲げて説明する。
「2025年以降、介護と認知症は大きな問題になります。なぜでしょう?」
年配の女性は静かな教室を見渡してから続ける。
「その年、多くのベビーブーマーが75歳になりました。そして75歳になると、統計的に認知症を発症するリスクが高まります。人口のおよそ15%が、現在75歳以上なのです!」
さまざまな年齢の10人の女子生徒が熱心に耳を傾けている。彼女たちは自主的に、放課後、西東京の拝島高校の教室に集まっている。
教師のナオミ・サエキは、認知症についてボランティアで講義している。
「皆さんの中にも、認知症のおじいさんがいるかもしれません。食べる人もいないのにゴミを出してしまうことがあるかもしれない。あるいは、賢明ではない金融上の判断をすることもあるかもしれません。今日は、そうした人をよりよく支えられるよう、皆さんに知ってもらいたいのです」
生徒たちは勢いよくうなずく。
おそらく、世界のほかの多くの国では、ほとんど見られないような光景だ。
午後遅く、本来なら生徒たちはとっくに帰宅していてもよい時間に、学校には自主的に学びに来た子どもたちがいる。
サエキはNGO「キャラバン」の依頼で、認知症とは何か、どう見分け、どのように接することができるのかを説明している。
なぜ生徒たちはそんなことをするのか。
「この問題は、どこにでもあるから」と15歳の生徒は言う。
「私のおばあちゃんは認知症です」と16歳の生徒が手を挙げる。
「知らない人にたくさんのお金を渡してしまいました」
肩をすくめる。ここでは、そうした問題を知っている人が多い。
高齢化した日本は、いわば世界的な認知症の中心地のような存在だ。
主として高齢者にみられるこの病気に、約450万人が罹患している。さらに約1,000万人が、認知症の典型的な前段階であるMCI(軽度認知障害)を抱えている。
当事者は、脳内のつながりが弱まるため忘れっぽくなる。孫の名前が分からなくなることもあれば、道に迷っていなくなることもある。金融詐欺の被害に遭うこともある。
動かない資産
認知症はもはや、家族が精神的な負担の限界に追い込まれる社会的危機であるだけではない。経済的な危機でもある。
前の10年代の終わりにはすでに、日本の介護制度が認知症患者のために年間58億ユーロを支出しなければならないという試算があった。当時、それは全症例の5分の1に相当していた。
現在では、その金額はかなり大きくなっているはずだ。
経済学者たちは、認知機能に障害を抱える人の割合が増える国では、別の場所にも経済問題が生じると警告している。
日本では、認知症またはその前段階にある人々の手元に、およそ315兆円、換算すると約1.7兆ユーロの貯蓄がある。これはドイツの国内総生産の3分の1以上に相当する。
その資産はしばしば、ほとんど活用されないままとなっている。
「高齢者の大半は、自分の資産管理について準備をしておらず、そのため資産の喪失や金融詐欺にさらされています」
金融コンサルティング会社FinWell Researchの代表サトシ・ノジリは、最近Bloombergでそう説明した。
「これは心配なことです」
認知症患者の家族にとっても同様だ。そのお金は介護のためにも必要だからである。
認知症の社会的・経済的影響は、今後数十年の間に、日本ほど人口高齢化が進んでいない国々にも及ぶ。
日本自身でさえ、最大の試練はまだこれからだ。
2016年にはすでに『ジャパン・タイムズ』が「認知症時限爆弾」について書いていた。毎日新聞は、介護人材不足、介護施設の不足、そして当事者にとって「過酷な」生活環境を警告している。
患者数の増加は、既存の介護体制をますます圧迫している。
では、どうすればよいのか。
「ここでは認知症は、すべての人に関わる課題なのです」
実際、日本ではいくつかの解決策が生まれており、ドイツなどの国々がそれを学ぶこともできる。
その一例が、拝島高校で見られる。
「もしおばあちゃんがあなたの名前を忘れてしまっても、怒らないようにしてください」
サエキは参加者の一人に語りかける。
怒鳴ってはいけない。ロールプレイを通して、生徒たちはそうした状況を練習する。
「それから、家族で一度、お金について話し合っておくべきです。認知症にはお金がかかることがありますから」
「90分の講座の最後には、皆さんにオレンジ色のリストバンドを渡します。私も着けています」
サエキは説明する。
「そうすれば、皆さんが認知症について理解し、いざというときに助けられる人だということが、周囲にも分かります」
この種の講座を学校、企業、居酒屋、団体などで実施するNGO「キャラバン」は、すでに1,700万人に認知症について教え、いわゆる認知症サポーターを育成してきた。
「私たちは実際には、特別なことをしているわけではありません」
サエキは、生徒たちの畏敬の念をやわらげるように強調する。
それでも、これは特別なことだ。
もし「キャラバン」の活動が、長年、ボランティアの専門家たちの協力によって広がってこなかったとしたら、どうなっていただろうか。
東京中心部で、シュンイチロウ・クリタはオフィスの窓の外を見ながら首を振る。
「日本の制度はずっと、人々が関与することを前提として作られています。そうでなければ成り立ちません」
市民社会がなければ、介護制度はすでに崩壊していただろう、とクリタはみている。
「ここでは認知症は、すべての人に関わる課題なのです。本当にすべての人に」
実際、日本ではいくつかの解決策が生まれており、ドイツなどの国々がそれを学ぶこともできる。
その一例が、拝島高校で見られる。
「もしおばあちゃんがあなたの名前を忘れてしまっても、怒らないようにしてください」
サエキは参加者の一人に語りかける。
怒鳴ってはいけない。ロールプレイを通して、生徒たちはそうした状況を練習する。
「それから、家族で一度、お金について話し合っておくべきです。認知症にはお金がかかることがありますから」
「90分の講座の最後には、皆さんにオレンジ色のリストバンドを渡します。私も着けています」
サエキは説明する。
「そうすれば、皆さんが認知症について理解し、いざというときに助けられる人だということが、周囲にも分かります」
この種の講座を学校、企業、居酒屋、団体などで実施するNGO「キャラバン」は、すでに1,700万人に認知症について教え、いわゆる認知症サポーターを育成してきた。
「私たちは実際には、特別なことをしているわけではありません」
サエキは、生徒たちの畏敬の念をやわらげるように強調する。
それでも、これは特別なことだ。
もし「キャラバン」の活動が、長年、ボランティアの専門家たちの協力によって広がってこなかったとしたら、どうなっていただろうか。
東京中心部で、シュンイチロウ・クリタはオフィスの窓の外を見ながら首を振る。
「日本の制度はずっと、人々が関与することを前提として作られています。そうでなければ成り立ちません」
市民社会がなければ、介護制度はすでに崩壊していただろう、とクリタはみている。
「ここでは認知症は、すべての人に関わる課題なのです。本当にすべての人に」
シュンイチロウ・クリタは、シンクタンクHealth and Global Policy Institute(HGPI)の認知症の専門家だ。
彼によれば、日本は他国の将来像としてだけでなく、ときには模範としても見られている。特に、市民社会を積極的に巻き込んでいる点においてだ。
増え続ける認知症患者を背景に、国会は長年の議論を経て2023年に法律を制定した。
その法律は、人々ができる限り長く自宅で暮らせるようにすることを目指している。
クリタは、これは潜在的には双方に利益のある状況だと言う。
全国的な支援体制
「ほとんどの人は施設に入りたいとは思っていません。そして、施設に入れば、国にも、自己負担を通じて家族にも多額のお金がかかります」
クリタは自分自身の経験からそれを知っている。
「30年前、私の祖母は認知症でした。家族の誰も病気について理解していませんでした。私たちにとって居心地の悪い話題で、大きなストレスになりました。最終的には祖母を施設に入れました」
もっと何かできたのではないかという罪悪感は、今も残っているという。
今なら、祖母は施設に入らずに済んだかもしれない、と彼は言う。
日本は長年にわたり、キャラバンのようなNGOの啓発活動を大きく超える、全国的な支援体制を築いてきた。
全国にはデイサービスがある。いわば高齢者向けの保育園のようなものだ。
そこでは絵を描いたり、運動をしたり、歌ったりする。
月々の自己負担はおよそ1,000円。一方、24時間の支援が付くグループホームなら、およそ20万円かかる。
それによって家族の負担が大きくなるのだろうか。
必ずしもそうではない、とハイデルベルク大学の日本研究者ヴィンセント・レッシュは言う。
彼は京都大学やパリのEHESSとの国際研究ネットワークの一員として、日本の高齢化が社会に与える影響を研究している。
「OECDの統計によれば、日本は介護制度に年間GDPの2.4%を支出しています。ドイツとほぼ同じです。ただしドイツでは、民間世帯が負担する費用の割合がかなり高くなっています」
背景にあるのは、国民への啓発だけではない。予防も重要だという。
「ドイツと比べると、日本は医療制度への負担を低く抑えるため、データ分析を強く活用しています」
レッシュは言う。
医療制度では、介護を受けている人々の機能的能力、栄養、リハビリテーション、経過に関する標準化されたデータが収集されている。
「そのデータを分析して施設にフィードバックすることで、地域差や改善の可能性を早い段階で把握します」
2023年の法律の基本的な考え方は「共生」である。
認知症の人ができる限り長く、社会の能動的な一員として参加し続けられるようにする。
「2025年にはすでに8,558か所の認知症カフェが存在し、全自治体の91.4%で提供されていました」
レッシュは説明する。
認知症カフェとは、認知症の人が、理解のあるスタッフとともに安心できる居場所を得たり、あるいは自らウェイターとして働いたりできる場所だ。
注文を間違えても構わない。
認知症治療は、次第にビジネスモデルになっている
最もよく知られているのが「注文をまちがえる料理店」だ。
2017年以降、このプロジェクトは日本各地で繰り返し期間限定レストランを開いている。
入口には、たとえば次のような一文が掲げられている。
「ご注文とは違うものが運ばれてくるかもしれません。あるいは、注文したものがまったく来ないかもしれません」
この取り組みは、認知症との向き合い方を実践的かつ経営的に示すものとして、世界中で話題になった。
認知症を軽減したり、ましてや治癒させたりできる確かな薬は今のところ知られていない。
拝島高校の生徒たちも、卒業後にはそのことを学ぶだろう。
それだけに、サエキは個人レベルでの予防を重視している。
そして、認知症の治療や予防は、次第にビジネスモデルにもなりつつある。
日本ではスタートアップ企業が大きな役割を果たしている。
認知症をコントロールできるもの、あるいは回避できるものにするという約束によって資金を集めているのだ。
今年5月、超音波治療によって認知症患者を治療しようとしている東京のスタートアップ、Sound Wave Innovationは、試験段階のために1,700万米ドルを調達した。
製薬会社エーザイも、2017年に10年間で1,200億円を認知症関連プロジェクトに投資すると表明しており、最近、スタートアップAltOidaに出資した。
同社は、ゲーム化したバーチャルリアリティを使った認知症早期発見テストを開発している。
こうした企業はほかにもある。
Amadeus Codeと音会 / OTOKAIについて
「このアプリに、いくつかの写真を入れるだけです」
簡素でモダンな会議室で、ジュン・イノウエはそう言う。
彼はたった今、自分の犬の写真をアプリにアップロードした。
すると、部屋に陽気なメロディーが流れ始める。写真の動物に合うとAIが判断した曲だ。
「画像をもとに、私たちのAIが複数のメロディーを提案し、その中からユーザーが一つを選べます。そしてさらに画像を追加し、サウンドを洗練していきます」
これは新しいタイプの脳トレーニングなのだという。
ポロシャツを着て、きちんと横分けした髪型のイノウエは、認知症予防に取り組むスタートアップ、Amadeus Codeの創業者兼CEOである。
同社の最初の製品が、この夏にリリースされたアプリ「音会 / OTOKAI」だ。
ユーザーは画像と音楽を結び付けることで、自分のシナプスを守ることができるという。
「素晴らしいのは、楽器を演奏できなくても、楽譜を読めなくても、音楽を作れることです。ゲーム感覚で使えます」
このアプリの成功を信じているのはイノウエだけではない。
かつてJ-POPプロデューサーとして働いていた彼を含む会社に、投資家たちは350万米ドルのベンチャーキャピタルを投じている。
画像と音楽を結び付けることが記憶力の強化に役立つかどうかについて、イノウエと数人の同僚は専門誌『Brain and Behavior』に発表した論文で示している。
さらに研究者たちは、認知症症例の少なくとも45%は、脳トレーニングなどによって少なくとも部分的には予防可能だと考えている。
収益はアプリ内課金から得る計画だ。
たとえば、アプリから予約できる脳のクイックテストは約2万円で、クリニックで行われるより複雑な検査よりも明らかに安い。
そのほか、音楽教師によるグループでの作曲レッスンもある。
アプリは今後さらに機能を拡充し、高齢者施設や介護施設を通じて患者に提供したり、企業が高齢の従業員に提供したりする予定だ。
果たして、これがビジネスになるのだろうか。
「これがビジネスになることに、私は疑いを持っていません」
イノウエは言う。
「結局、認知症が至るところに存在する問題だということは、今では分かっています。そして、認知症に関わる人が少なくなればなるほど、認知症はよりいっそう私たち自身の問題になっていきます」
さらにCEOは、AIが彼の犬の写真に対して提案したメロディーに合わせて口ずさみながら、こう付け加えた。
「それに、誰だって美しいメロディーが好きでしょう」
音楽の力には限界がない。
いまや認知症に対して、あらゆることが試されている。生活のあらゆる領域で。
著名な音楽プロデューサーたちが作った音楽まで、その一つとして。